先生ブログ
バトンブログ 私が紹介したい印象に残った本」
山本直樹
2013年01月24日 16:05
今日は、講師の山本です。
当塾に通う辻小学校、辻南小学校、文蔵小学校、南浦和小学校、岸町小学校、別所小学校、大谷場小学校、高砂小学校、
南浦和中学校、内谷中学校、白幡中学校、岸中学校、大谷場中学校の生徒たちに伝えたい事です。
今回は「印象に残った本」ということですが、私が紹介したい本は
『男子の本懐』(新潮文庫 城山三郎)です。
この話は第一次世界大戦後、一時的に湧き上がった「大戦景気」の反動からくる「戦後恐慌」の中、内閣総理大臣・大蔵大臣に就任した浜口雄幸・井上準之助の政治家生命を描いた作品です。
物語ですから、多少の偏りがあるかもしれませんし、これが完全な史実だとは限りませんが大きな感銘を受けた記憶があります。
当時の日本は不況にあえいでいました。この不況を解決する方法は、「円の信用を取り戻すこと」でした。そのためには、削れる予算はなるべく削り、国際社会で通用する産業を育成することが必要です。方法がわかっているのであればあとは実行するだけなのですが、これが一向に実行に移されないのです。
「予算を削る」にあたっては当然「軍事費」も例外ではありません。すると軍部を敵に回すことになります。また、「国際社会で通用する産業を育成」するには弱い企業を淘汰していかなければならない、つまり、「多くの零細企業をつぶしていく=大規模なリストラ」が必要となります。そのようなことをすれば、軍部や国民の反感を買うのは必至で、政治家生命はおろか本当の命も危なくなります。だから、誰も行動に移せなかったのです。
そのような状況下で内閣総理大臣に就任した浜口と浜口に請われ大蔵大辞任に就いた井上は今後の日本を考え、誰も実行できなかった上記の「政策」を実施していきます。自ら嫌われ役を買って出たのです。以下、浜口が首相に就く際、家族に話したとされる内容です。
「すでに決死だから、途中、何事か起って中道で斃(たお)れることがあっても、もとより男子として本懐である」
(もう、死を覚悟しているから、政策の実施途中で死ね・暗殺されることがあったとしても構わない)
井上準之助に至っては、大蔵相就任にあたって妻に遺産整理の方法を伝えています。
二人とも、これから実施する政策に「命を懸けている」ことがわかるエピソードです。最近では、「社会保障と税の一体改革」に政治生命を懸けて臨むと言った総理大臣もいま
したが、果たしてその覚悟はいかほどだったのでしょうか?
就任後、直ちに政策を実行していきますが結果は予想通りでした。都市では企業の倒産・失業者が増加し国民の不満は高まり、緊縮財政により軍事費を削減された海軍・右翼団体は浜口内閣を倒すために躍起になっていきます。
そのような中、浜口は東京駅で右翼団体の青年に襲撃され重傷(手術で腸の30%を摘出)を負います。絶対に安静にしていなければならないにもかかわらず、浜口は自身の政策の理解を得るために無理をおして国会に登壇し、答弁に応じるのです。そして、その無理がたたり浜口の病状は悪化し命を落としてしまうのです。
現在も世の中は不況に喘いでおり、現状を打破するためには何かを変えていかなければならないはずです。しかし、政治家たちは票集めに執心し、口当たりの良いことばかり言っています。本当は、覚悟を持ち、恨みを買ってでもやらなければならないことがあるはずです。
新しく総理大臣になった安部首相には、浜口のような「決死の覚悟」を持って政策に臨んでもらいたいですね。「体調が悪いから、総理を辞める」なんて言ってられませんよ!
翻って、自分の「本懐」は何なのか考えてみましたが、いっこうに思いつきません。生きているうちに見つかるのか、死の直前に思いつくのかわかりませんが、悔いのない人生を歩んでいきたいと思います。
ここまで、長文におつきあい下さりありがとうございました。
次は、英語担当の黒沢先生お願いします。きっと素敵な本を紹介してくれるはずです。ご期待ください。